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生憎の雨模様、ビクトリア湾を囲む摩天楼に灯りが灯り始めたころ、シルバー・シャドーはオーシャンターミナルを出航した。
巨大さと賑やかさを強調する10万トンクラスのメガシップに話題が集まりがちな昨今、シルバー・シャドーは28,000トンの中型船である。1日もあればレストランやラウンジの位置も掌握でき、迷うことなく快適に“自分の棲家”としてのクルーズライフを楽しむことができた。中型とは言え、それでも全長186メートル、客室数193室を持つ7層建ての建造物は、とにかく大きく気品漂う美しさと優雅さを感じとることができる。
今回の航海では香港を出た直後の外洋が、一番波が高かったように思う。しかしながら、フィンスタビライザー(横揺れ防止装置)が機能しているのが体感でき、揺れは感じるものの、不快になるほどではなく、全般を通じて実にスムースで快適なクルーズとなった。
ほぼ満室と聞いていた船内では、混雑や人ごみといった不快さを感じることは一切なく、むしろ、350人以上の他のゲストと共に同じ空間を共有しているとは思えないほどの時間と空間を感じることが出来た。シルバーシー・クルーズが魅力の一つとして表現するスペーシャス感というのが、きっとこういった印象に繋がるのだろう。2つのメインダイニング「ラ・テラッツァ」、「ザ・レストラン」は、食事時間に幅を設け、シートリクエストや好みのテイストへのアレンジにも、実にフレキシブルに対応してくれた。毎食供される料理のテイストは言うまでもない。
プールサイドグリルと唯一の有料レストラン「ル・シャンパン」(ワインはボトルオーダーのみですが、食事と同様実にリーズナブル!)そして、24時間のルームサービスと合わせて毎日その時の気分でうまく使いこなせるようになってくる。赤白を選べるくらいかと想像していた一皿ごとにオーダーするグラスワインも、ラインナップの豊富さに驚きと感動を与えてくれた。短期のホテル滞在では滅多に利用しないフィットネスセンターも、シルバー・シャドー船内で、その存在の重要性を感じることになった。
旅の途中からスタッフは顔を覚えてくれるようになる。やがて名前で声を掛けられるようになり、そして好みの料理やワインの種類、適量までも掴んでくれるようになった。ここではバトラーは伊達ではなかった。廊下ですれ違う時はいつも笑顔で語りかけてくれ、どんな事でもサポートする姿勢を示してくれる。ラウンジのピアニスト、バーテンダー、プールサイドスタッフ、運行スタッフ皆一様にパーソナルなサービスに徹しているのが感じ取れる。下船時は本当に名残惜しく、また帰って来たいと思える滞在となった。
優雅なスペースとパーソナルなサービス。上質なラグジュアリーシップ、シルバーシーは、数多あるグルーズの中で、それこそ洋上のハイダウェイではないか。驚きと意外性を知ることになったシルバー・シャドーの航海となった。
Edit & Photo by Hiroshi Kuchiki